これだから人生って奴は面白い

バトル・カーニバル初戦。
待ちに待った瞬間が、とうとう来た。
見たところ、イセスさんに消耗はほとんど無い。
こちらは言うまでもなく・・・万全。
後はもう、言いわけなんざ欠片も入り込む余地の無い、真っ向勝負が・・・



開戦。

黒燐蟲の力を降し、必殺の構えを取る。
その時、既に勝敗は決していた。
ためらいのない、全力の一撃が、放たれた。


ブラッドスティール・改


様子を見る余裕など、微塵も無い攻撃に。
体力の温存など、考える暇を与えない連撃に。
詠唱兵器となった学ランは、容赦なく削られ。
防御もままならず身体は、擂り下ろされ。
貧弱な回復なんぞ、追いつくわけもなく。
意識を刈り取られるまで、そう長くはかからなかった。

どこかで、思った。

「・・・やっぱ、つえぇなぁ、こいつら」

幻聴が聞こえた。

・・・笑いながら倒れるヤツがあるか？
男なら、首だけんなっても、敵の喉元に喰らいつけや。
だからお前は糞餓鬼なんだっつの。

・・・は、クソジジィが。
なーんも知らねえ癖に、知ったような口を効くんじゃねぇよ。
別に構やしねぇだろ？　・・・こいつらぁ、敵じゃあねぇ、


俺の、ダチだ。


・・・ああ、だからか。
だから、俺は、やり合いたかったんだな。


「・・・勝ってこいよ？」

大の字に倒れた身体を、湿った冬の風が撫ぜた。
遠くで、アナウンスの声が響く。


『優勝、イセス・ストロームガルド！！』


「・・・それはそれで悔しいなぁ、オイ」
呟いた言葉とは裏腹に、頬が緩むのを抑えられなかった。