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PBWシルバーレインのPC(プレイヤーキャラクター) 黒山・白児の活動及び報告及び記録
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b55947_icon_4.jpgさて、お正月ですが、本日実家から帰ってきました。
お久しぶりです。
ほんの二ヶ月ほどしか離れていないはずなんですが、
やはり正月マジックとでも言いましょうか、
久しぶりの故郷は何やら懐かしく感じるもので。
それだけに、もう少しゆっくりしてきても良かったかなと、勿体なく思っています。

・・・まぁ正直に言えば、
祖父と正月から賭けブラックジャックやってたら、
三万ほど巻き上げられたので逃げてきたわけですが。
孫相手に容赦無しか、あのジジィ。

今年もおそらくはこんな調子でしょうが、どうぞよろしくお願いします。






年末年始の故郷の街は、どうにも馴染めない。
白児は、昔からそう思っていた。

「やっぱ、潮の匂いはしねぇなぁ」
電車を降りた白児が、つぶやいた。
海から程近いこの街は、夏ともなれば台風とともに強烈な潮風が吹く。
生温い、湿気を含んだ風はあまり気持ちのいいものではないが、
少なくとも雪の降らないこの土地では、冬よりもはっきりと季節を感じさせてくれる。
その頃はまだここに居たはずなのだが・・・なぜか今それがないのが無性に寂しい。
駅から一歩出ると、懐かしい潮風の代わりに、乾いた冬の風が首筋を撫ぜた。
電車の暖房に慣れきった身体には、意外と厳しい。
風に意思などあろうはずも無いが、何となく、
夏とは違う、冬の街の無愛想さを風が表現しているように思う。
この季節が馴染めない理由の一つだ。
「・・・・・・マフラーでもしてくりゃよかったか、こりゃ」
風の吹く方向を睨み、皮肉っぽく言うのは誰に向かってなのか。
睨んだところで風がやむわけでもないというのに。
見た目とは裏腹に、子供じみた仕草をしたのは、
久しぶりの帰郷に、どこか浮かれているからなのかもしれない。
まぁ風も冷たく、人通りも少ない、
無愛想な街に浮かれる要素があるとは、とても思えないが。

小さいながらも庭もある、落ち着いた佇まいの家の前で、白児は目を細めていた。
二ヶ月という時間は、短いようでいて、長い。
生まれてからずっと暮らしていた家も、
『それが当たり前』から『そういう家屋』へと印象が変わる程度には、長い。
この家もずいぶん・・・、と最後まで考えるより先に、引き戸が開いた。
「あら、早かったのねぇ?」
家から出てきたのは、白い髪を後ろで束ねた、上品そうな老女、
白児の祖母だった。
「ただいま、戻りました」
「あらあら白児ちゃん、おかえり。あけましておめでとうね。外は寒いでしょ?」
ニコニコと中に入るよう出迎えてくれた祖母に、白児は苦い顔をした。
「ばあちゃん、もう私も17ですから・・・白児ちゃんはやめてもらえませんか?」
「あらあら。そういえば誕生日は向こうで迎えたのよね、白児ちゃんは」
うっかりしてたわぁ、と笑う祖母は、
どうやら、白児ちゃん呼ばわりをやめる気は毛ほどもないらしい。
もう一度ぐらいは注意しておきたいところだが、言えば言ったで、
「白児ちゃんは白児ちゃんで、白児ちゃんなんだから白児ちゃんでしょうに?」
と、嫌がらせのように連呼されるだけだと解りきっていた、諦めよう。
祖母は祖父とは違い、大変良い人なのだが、この一点ばかりはほとほと困る。
まだしも、祖父の様に『糞餓鬼』呼ばわりされる方が落ち着くのだが。
まぁ白児ちゃん呼ばわりも愛情表現なのだろうから、
そう思えばまだ我慢できる・・・気がする。
と、噂をすればなんとやら、ふすまの向こうから、祖父のしゃがれた声が聞こえた。

「おーい、『白児ちゃん』は帰ってきたか?」
「はーい、帰ってきましたよ、『白児ちゃん』が」
「そーか、早くこっち来い、『白児ちゃん』」
「いやがらせかクソジジィ!?」
怒鳴り声を上げながら、白児がふすまを破かんばかりの勢いで開くと、
炬燵に足を突っ込んでいた祖父は大げさに目を丸くしていた。
白々しいことこの上ない。
確か祖父は七十手前のはずだが、
黒々とした髪と細身ながらも筋肉のついた身体は、五十代と言ってもまだ通じる。
その祖父は、あわあわと這い出すように、祖母にすがりつくと、
これまた芝居がかった棒読みでのたまった。
「ば、ばあちゃん、大変だ。『白児ちゃん』が何か怒ってるぞ?」
「あらあら、『白児ちゃん』もきっと帰ってきたばかりでお腹が空いてるんでしょうかね?」
「そうか、『白児ちゃん』も育ち盛りだからな、それは仕方がねぇな」
「そうそう、『白児ちゃん』ったらまた大きくなりましたよねぇ」
念のために、祖母の方は限りなく天然であると付け加えておこう。
無論、祖父の方は悪意100%だが。
「オーケイ、ジジィ。あけましておめでとう、そしてさようならだ」
「ちょっと待て。ばあちゃんは? ばあちゃんも言ってるぞ?」
「じいちゃん」
「なんだ?」
「・・・あの人は、天然だから」
「・・・・・・」
お互いに、目を伏せた。
恐らく祖父の方も何がしかの苦労があったのだろう。
今、二人の間で血よりも濃い絆が確実に出来上がった。
「あらあら、二人して内緒話? ずーるーいー」
これのどこが内緒話かは解らない。が、それはともかく。
祖母よ。
小首をかしげてむくれないで欲しいのだが。
六十過ぎて、その仕草は若干痛い。
「なあ糞餓鬼よ」
「なんだクソジジィ」
「・・・俺、なんでコレと結婚したんだろ?」
「・・・・・・ジジィ、強く生きろ」
「?」 
やはり天然は一味違う。結婚という単語が出ているのに、
会話のメインが自分であると解っていないらしい。

「まぁ・・・なんだ。ばあちゃん、糞餓鬼になんぞウマいもんでも出してやれ」
「あらあら、うっかりしてたわ。はいはい、すぐに出しますからね」
台所へと祖母が消えていくのを、祖父はじっと見ていた。
そして、祖母が完全に見えなくなると、再び炬燵に潜りこむ。
丁度、白児に背を向けるような形で。
「おう、白児」
「あん?」
「二度は言わんぞ。・・・おかえり」
「・・・・・・おう、ただいま」
そう言って、白児も炬燵へ足を入れた。
祖父はおかえりと言い、白児はただいまと答えた。
それで、充分だった。充分に、白児は実感した。
ああ、帰ってきたんだな、と。

街が無愛想に感じたのは、
それだけこの家が暖かかったということなのかもしれない。
白児自身が、その事に気づいているのかどうかは、解らないが、
まるっきり、外れているということはなさそうだ。
少なくとも、白児と、祖父と、祖母の顔を見る限りは。

「ねぇ二人ともー、お雑煮のお餅は何個入れるー?」
「俺、二個」
「あ、私は三つください」
あいよー『三つ』ねーと言う祖母の明るい声に、
ふと、白児は何かを思い出した。
「そういえば、じいちゃん」
「お? どうした?」
「いえ、学校で友人から聞いたんですが・・・」
「ほう、面白い話か?」
ええ、かなり、と答えてから、
「誕生日とクリスマスとお年玉は・・・別々に渡すのが一般的なんだとか」
「・・・・・・」
「じいちゃん?」
「・・・・・・余計な事を知ったようだな?」
「オーケイ、表出ろクソジジィ」
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