戦争前夜

ヨーロッパ人狼戦線。決戦こそ明朝ですが、
既に私達はコルシカ島に上陸しているわけですが・・・。
さて、準備をしましょうか？

敵は妖獣の群れではなく、来訪者。
私にとって、こんな戦争らしい戦争は、今回が初めて。
なかなかに怖いものですよ。流石の私でも、ね。

・・・俺のダチにゃ、ヴァンパイアもクルースニクもいる、
敵さんの中にだって、話しゃ解る奴だっているだろうさ。
けど・・・んなこと言ってる場合じゃねぇんだわ。
殴り合って、殴り合って、決着付けて・・・話をすんのはその後だ。
特に・・・世界結界をぶちこわそうなんて、人さまの迷惑を考えてねぇ輩とは、な。

命の取り合いになるってのは解ってるが、喧嘩なんてな、そんなもんだ。
命はらねぇ喧嘩なんざ、やったことねぇし。

さて、一発、大喧嘩をしに行きますか。
ったく、春休みのこの時期に、面倒なことをさせやがって。
さっさとたたむとすっかね。

――プルルルルル・・・プルルルルル・・・プルル、ガチャッ――

「はい、黒山ですが何の用だ糞餓鬼が」
「おう、クソジジィ、俺じゃなかったらどうするつもりだった？」
「あん？　コレクトコールなんて洒落たことする奴がほかにいるんか？」
「・・・ああ、なるほど」
「で？　何の用だ？　ばあちゃんならもう寝てっぞ？」
「いえ、別にじいちゃんでも構わないんですが」
「だったら早く言え、電話代こっち持ちなんだぞ？」
「・・・・・・」
「？　もしもし？　もしもーし？」
「ああ、その・・・なんですか」
「いや、なんですか、って。そりゃこっちのセリフだろが？」
「いえ、まぁ、そう、なんです、が・・・ね」
「・・・新手のいやがらせか？　言っとくが後で電話代はおめぇに請求すっからな？」
「いや、別に・・・つか、そういうつもりじゃねぇよ」
「あーもう、うぜぇな！　あと五秒で切るぞ、はい、ごー、よん、とんで、ぜろ」
「・・・近いウチ、帰ります」
「あ？　・・・そんだけ、か？　つか何回帰ってくるつもりだ、次はお盆って話だったろ？」
「いや、それだけじゃなく、なんというか、その・・・」
「はっきりしねぇなぁ、なんだ、女か？　女でも連れてくんのか？」
「ええ、まぁ、はい」
「なわきゃねぇよな・・・つか、お前も下手なウソつくんじゃねぇよ？」
「ちょっと、一人、客を連れて行くと思うので・・・」
「いや、そういうのはいらねっつってんだろ？」
「いや・・・・・・」
「・・・・・・」
「その・・・・・・」
「・・・・・・マジ、か？」
「・・・ええ」
「・・・あー、その、なんだ。・・・ああ、うん、ああ、うん、解った、解った」
「まぁ、それだけ、ですので」
「ああ、その、なんだ？　あれだ、ちゃんと、前日にまた電話しろよ？　いいな？」
「え、ええ、はい、それはもう」
「ああ、うん、なら、いい。うん、それなら別に、いいぞ、俺は」
「じゃあ、ばあちゃんにも一応・・・」
「あ？　あー、あー、解った解った、うん、あれだろ、俺から言っとけばいいんだろ？」
「・・・一応、頼みます」
「・・・まじで、伝えていいのか？」
「いや、仕方ないでしょう？」
「そうだけどよ・・・いいのか？」
「・・・・・・一応、礼儀ですから」
「・・・わかった、伝えておく。じゃあまた電話しろ、な？」
「ええ、それじゃあ・・・また」
「ああ」

―――ガチャン―――