ガラスにのせられし怨言

日曜に戦争を控えている状態ですが、
ゴースト事件がこちらの事情など構ってくれるわけもなく。
戦争直後に出発予定の依頼を受けてまいりました。

住宅街にある空き地。ここは本来なら家が建つはずであった。
しかし、通りで起きた殺人事件により、手つかずのまま今に至る。
この空き地に、一体の自爆霊が現れる。
・・・ガラスや陶器の割れる音に誘われるように。

桂さんの運命予報によれば、近いうちに被害者が出るであろうとの事。
ですが、逆に言えば、まだ被害者は出ていない。
・・・正直な話、こういう仕事ほど、運命予報が有難いと思う時はありませんよ。

警察の仕事は薬と一緒だと、聞いたことがあります。
結局のところ、警察に出来るのは予防ではなく、
対処療法でしかないのだ、と。

考えてみれば、警察官というのも難儀な仕事です。
事の大小を問わず、犠牲者が出なければ動く事も出来ない。
組織という力を持っているのにも関わらず・・・無念、でしょうね。

ですが、犠牲者が出なければ動けないのは、我々も同じかもしれません。
今回、殺人事件の被害者が自縛霊となったかどうかはわからない、と、
そう、桂さんは、言っていました。

しかし、もしも、その殺人事件さえ防げていたなら、
そもそも自縛霊は現れなかったかもしれない。
いや、殺人事件が起きてしまった時点で、既に被害者は出ている。

いえ、誰も彼も救えるわけが無い、そんなことは百も承知。
わかっては、いるんですよ、そんなことは・・・・・・ね。

・・・時折、思うのですよ。
私のこの能力は何のためにあるのだろうか、と。
ゴーストと戦うためにあるのは、確かでしょう。
しかし、それだけで、そのことだけでいいのだろうか、とも思うのです。

・・・思いあがり、ですね。
まったく、私のような未熟者が力を持つと、碌な事が無い。
分際をわきまえないことばかり、考えてしまう。