大いなる災い

さて、洒落にならん事態のようで。
簡単ながら、伝え聞いたことを纏めてみます。


天綸衆が伝承していた『大いなる災い』。
そこに繋がると思われる妖獣を封じた石、妖獣の石を、
四国からカーフェリーを使い、銀誓館へと運ぶ最中の事。
紀伊半島の南にさしかかった所で、石は海上で破裂。
解き放たれた妖獣―聞くところによると、それは巨大な黒い麒麟のようであったとか―は、
カーフェリーを沈めると、北東へ向かい、ゆっくりと移動を開始した。
・・・とてつもない量の妖獣を生み出しながら。


・・・北東、ね。
四国に封じられた妖獣が、何をしに行くのやら。

紀伊半島南から北東へ。まっとうに考えるなら、
三重、愛知、静岡辺りが目的地、ということですかね。
ふむ、御伊勢参りか名古屋城、静岡でお茶を一杯とも考えられますか。

・・・失礼した。
ですが、茶化すつもりで言っているのではないのですよ。

紀伊半島の南。
そこから北東の方角。

さて、この二つから何を想像しますか？
北東・・・この場合、正確に北東と言っていない可能性もあります。
北北東、東北東、これらも混ぜてだいたい北東と言っているとしたら。
下手をすると、妖獣の目的地は・・・


ここ、鎌倉かもしれません。
もっと言えば、銀誓館ですか。


ただの偶然ならば、まだ良い。
しかし、ここに何らかの意図が噛んでいたら・・・そう考えると怖い物があります。
『大いなる災い』を手駒と利用する敵対勢力の存在。
ふむ・・・偶然の方がよほど有難い。


もちろん、見当違いに終わる可能性の方がよほど高い。
だが、最悪の事態も常に考えておくべきでしょう。
生き残りたいのなら、ね。

・・・・・・。

まぁ・・・その、なんですか。

正直、死にたくはなくてね。
いや、違うな。
最近、死にたくなくなりまして。

守りたい人が、増えたんですよ。

逃げるつもりは毛頭ない、けれど死に逃げなんてのも、真っ平御免だ。
死んだらその後、誰も守れない。
だから・・・死にたくはないと、思うんですよ。心底に。


・・・泣き言は、このぐらいでやめておきましょうか。
考えるのは、私の仕事ではありませんし。
私は私の仕事をこなしましょう、そしてその準備も。


さて、
戦う支度を始めましょうか。
守る支度を始めましょうか。
生き残る支度を始めましょうか。

戦って、守って、生き残って。
どれか一つならとても簡単なんですが、
大人は大変ですね、全部をやらないと。

やれやれ・・・忙しいことです。